日常生活で心理学は役に立たない
心理学系の本は世の中にはいっぱいあります。
しかも、多くは日常生活やビジネスなどに生かせるようにかなり歪曲して書かれているものがあります。
個人的にはあまり心理学に溺れてしまうと意味がないような気がしています。
アメリカのミシガン大学の心理学者ティモシー・ウィルソン氏が興味深い実験を行っています。
彼は、被験者を心理分析の基本的なメソッドをレクチャーしたAグループと、一切の予備知識を与えないBグループに分け、それぞれにテストでのカンニングを疑う教師と疑われる生徒とのやりとりが収められた映像を見せました。
Aグループは、人が嘘をつくときにどのような兆候が見られるか、いくつかの事例と傾向を知っています。
しかし、生徒が本当にカンニングを行っていたとすれば、確信犯的に嘘をついているわけです。
たとえば、生徒の目が泳いでいたとして、それが嘘をついているからなのか、それとも無実なのに教師の尋問に対して動揺しているからなのか…。
この判別は、素人にはとても難しいのです。
結果として、生徒の有罪/無罪を言い当てられた正答率が圧倒的に高かったのは、Bグループの方でした。
つまり、Aグループは事前に与えられた心理学のメソッドを深読みし、かえってミスリードされてしまったわけです。
表情や態度から得られる情報というのは多岐にわたり、生半可な知識だけを断片的に学んだところで、それを実際に生かせるようにはならないのです。
結局のところ、コミュニケーションというのはそんなハウツーを学んだところでうまくいくものではなく、日常生活では常日頃の自然体でいることのほうが重要でしょう。